
残された石仏を訪ねるシリーズ、久しぶりの記事を書きます。
台北新四国八十八ヶ所霊場とは、日本統治時代に台湾台北市で開創された写し四国霊場です。当時札所として機能していた石仏の幾つかが台湾に残されています。
台北新四国八十八ヶ所霊場についてもっと知りたい人は霊場タグの古い記事から読んでみてください。
私は日本でただ一人の民間の台北新四国八十八ヶ所霊場研究家であり、私以上に現地調査を行なっている人は少なくても現時点で日本人にはいないと思います。
さて、今回桃園と北投で新たに当時の石仏が発見、公開されたため、現地に飛びました。
今回は、桃園市でその存在が発見された61番石仏についての報告です。
桃園市南僑桃園觀光體驗工廠に石仏があることが発覚
実は61番石仏は、既に廃棄されている、もしくは誰かが個人で所有していると思われていたため、長い間その存在が確認されたことはありませんでした。私も既に廃棄されているのだろうと思っていました。
しかし昨年6月に新たな情報があり、存在していることが確認されたのです。
しかもその場所は台北市内ではなく、桃園市。

南僑桃園観光体験工廠とは
台湾鉄道桃園駅から歩いて約20分。南僑桃園観光体験工廠という場所にあります。
台湾の大手企業グループである南僑集團が運営しています。
南僑集團は食品製造や飲食業の他、化学製品の製造も手がける会社で、例えば台北の小籠包で有名な點水樓なども運営しています。
元々工場があったここは2012年に体験型観光施設としてオープンしました。
工場見学だけでなく、例えば春巻き作りやピザ作りなどを体験できる施設です。(予約が必要な場合もあり)
手作り体験などをする場合は料金が必要ですが、ただ敷地に入るだけ、石仏を見るだけであれば無料です。
南僑桃園觀光體驗工廠にある61番石仏
私が訪れたのは2026年2月7日。
最寄駅から歩いても20分なので、歩くつもりでしたが、(いつもそうだけど)他の用事で時間がなくなってきたため、往復ともUberを利用しました。
行きはタクシーでも大丈夫ですが、帰りはほとんどタクシーも通らない道なので、Uberか徒歩での移動がおすすめです。
バスの場合は台湾鉄道桃園駅から168A番というバスで龜山工業區服務中心バス停で下車してすぐですが、このバスが1日に4本しかないので、現実的ではありません。

特に門番や警備員などがいるわけでもなく、ふらりと入っていけます。
しかし、実は私はこの敷地内のどこに石仏があるのかわからない状態で訪れました。「行けば何とか探せるだろう」と思っていたのです。
敷地自体はそんなに広くはないのですが、それでもあっち行ったり、こっち行ったりでかなり探しました。

私のこの記事を参考に、ここに行ってみようという奇特な人もいるかもしれませんので、場所を記しておきます。上の画像の赤丸のところです。
手前の真ん中に入口がありますので、入って、右折して、更に右折。行政大樓という建物に向かって右手前に石仏があります。

建物の前、木がいくつか植っている中に、無造作に安置されていました。
日光と風雨に晒されているものの、保存状態は良いようです。

間違いなく台北新四国八十八ヶ所霊場の61番石仏でした。
いつからここにあるのか不明な上、なぜここにあるのかもわからなかったので、私が問い合わせたところ返信がありました。
この石仏は1971年にここが工場としてスタートした時点からここにあり、所有者は南僑グループの創始者であった陳其志氏。
陳其志氏の息子で現在の社長である陳飛龍氏も、この石仏が非常に古いもので、工場に初めて安置された時のことは記憶しているものの、由来などについて覚えていないとのこと。
霊場開創当時、札所となる石仏は全て台北市内にあり、この61番石仏は草山(陽明山)にあった弘法寺の台北別院に安置されていました。
弘法寺台北別院は戦後取り壊されましたが、どういう経緯で陳其志氏にこの石仏が渡ったのかは、もう誰もわからないでしょう。
陳其志氏は戦後、日本人が残した旭炭鉱(現在の台北市文山区)を買収し、炭鉱事業を始めた経緯がわかっているので、同様に陽明山の土地を何かの必要があって購入し、石仏を保存していたのかもしれませんね。

私同様、台湾にも研究者がいますが、今まで誰もこの石仏がここにあるとは思ってもいなかったのでしょう。
林承緯教授の「宗教造型與民俗傳承」が2012年に出版され、台北新四国八十八ヶ所霊場の認知度が広まった後、他にもあるかもしれないと思った探索好きな有志の多くは台北市内を探し、新たに見つかった石仏もいくつかありましたが、まさか桃園市にあるとは思いませんよね。
この石仏がどういうものかを知っていた人が、たまたまここを訪れて発見したようです。台湾人でも霊場のことを知らないと「何これ?」状態でしょう。
寄進者の名前も彫ってありますが、確実に読めるのは三木徳三郎さん。他は部分的に読めないところがあります。
とにかく、61番石仏は、陽明山から遠く離れた桃園市で大切に保管されていて嬉しい限りです。
台北新四国八十八ヶ所霊場第61番石仏まとめ

今回の61番石仏も含め、台北新四国八十八ヶ所霊場の現存する石仏を見に行きたい人は下記を読んでみてください。
→ 台北新四国八十八ヶ所霊場石仏を見に行くための巡拝ガイドブック
最近でも2〜3年に1回くらいは新たな台北新四国八十八ヶ所霊場の石仏が発見、あるいは個人所有で非公開だったものが新たに公開されるような情報が流れます。
遺失したと思われていた61番石仏もこうして見つかったので、今後もまたどこかで石仏が発見される可能性がありますので期待しましょう。
台北観光に行く日本人は多いですが、桃園ってそんなに行く人はいないかもしれません。
でも、これを機会に桃園観光を検討してみてはどうでしょう。台鉄桃園駅あるいは中壢駅周辺にはホテルも多いですし、台北駅まで電車で1時間もかかりません。
ホテルも物価も台北より安いし、桃園神社や桃園観光夜市など結構楽しめるのではないかと思いますよ。石仏参拝のついでにぜひ桃園市を楽しんでみてください。
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