台南市北部に位置する後壁區菁寮老街
老街とは、古い街並みが残る街のことを言います。
台湾には少なくても130ヶ所以上の老街が残っており、台南市内にもいくつかの老街がありますが、日本統治時代の洋風建築物を残した老街が多いです。
しかしこの菁寮老街は木造家屋やレンガ建築の建物が多く残っており、他の老街とはちょっと違った雰囲気を感じることができる老街です。
私が菁寮老街を訪れたのは2024年3月9日(土)。土日しか営業していないお店もあるそうなので、ある程度活気ある老街を訪れたいなら土日がおすすめです。
菁寮老街の基礎知識
まずは簡単に菁寮老街の歴史です。
主に染め物販売が主産業であった菁寮は、青仔という染料の元となる樹木を栽培していたことから「青仔寮」と呼ばれ、これが菁寮と呼ばれる由来になったと言われています。
1683〜1895年の清朝統治時代には嘉義と台南を繋ぐ宿場町として栄えました。
当時は多くの飲食店やホテル、映画館、劇場、ビリヤード場などがあったそうです。
嘉義と台南の境界線あたりに八掌渓という河川がありますが、この沿岸で最も栄えていたとのこと。
菁寮は北勢街とも呼ばれました。これは恐らく「台南の北部で最も栄えている街」という意味であったと推察します。
その後、日本統治時代には店舗用の建物が多く建てられ、寝具や家具など嫁入り道具が全て揃うことから嫁妝街(嫁入り街)とも呼ばれていました。
その頃の景観がそのまま現存しているのが菁寮老街です。
菁寮老街の読み方
菁という字は日本ではあまり使われない字ですね。日本語読みすると「せいりょうろうがい」です。
台湾では「ジンリャオラオジェ(Jīngliáo lǎojiē)」です。
「菁」は野菜のカブの意味ですが、かつてはニラを意味していたそうです。また、草木が青々と繁る様子を指すこともあります。
菁寮老街へのアクセス
アクセスの難易度は高めです。
主にバスでのアクセスになりますが、全て本数は少なめ。1時間に1本もないと思っていた方が良いです。
高鉄嘉義駅から
台北方面から新幹線で向かう場合は高鉄嘉義駅で下車し、黄16-1または33關子嶺線のバスで行けますが、本数は少なめ。
私はバスで向かう予定でしたが、諸事情で遅れてしまいやむなくタクシーを使いました。17分程度、330元でした。
台鉄後壁駅から
後壁駅からが最もアクセスしやすいと思います。33關子嶺線または黄6または黄6-1のバスで菁寮老街に行けます。
また黄6-1のバスは新榮駅からも発着します。
いずれの場合も帰りのバスの時刻は確認しておいた方が良いです。後述しますが、私は帰りのバスを逃してしまいました。
ちなみにUberも走ってないどころか、流しのタクシーも皆無です。
困った場合は無米楽旅遊服務中心(いわゆる観光案内所)に行って、タクシーを呼んでもらうと良いです。
参考までに菁寮バス停の黄6時刻表は上記です。後壁駅へ向かうバスは午後は3本しか出発しません。
詳しくは大台南公車のホームページで事前にお調べください。
「無米樂」と「俗女養成記」
2005年のドキュメンタリー映画「無米樂」と2019年から放映されたTVドラマ「俗女養成記」のロケ地として菁寮老街が使われ、いわゆるロケ地巡りとして台湾人が多く訪れることになりました。
聖地巡礼ですね。ロケ地となった家屋の周辺は特に観光客が多かったです。
「無米楽」は菁寮という農村の生活を舞台に”米がなくても楽しく暮らせる"ということをテーマにした映画。
「俗女養成記」は日本でも一部のテレビ局やネット放送で「おんなの幸せマニュアル」として放送されていたので、観たことのある人もいるかもしれません。
これらで話題になる前までは、菁寮は単なる田舎町でした。
私が菁寮老街を訪れたのは2024年3月9日(土)。日本人含む外国人らしき観光客は全く見かけませんでしたが、台湾人観光客が団体含めて多かったです。
菁寮老街とその周辺を散策する
大きな街ではないので、隅から隅までゆっくり散策して歩いても2時間程度。急いで回れば1時間、途中で食事や買い物を楽しむと3時間といったところです。
二十四節気歩道
菁寮老街の北側をぐるっと散策できる散歩道です。
二十四節気は日本でも知られている、例えば立春、夏至、秋分、大寒など春夏秋冬をそれぞれ6に分けた季節区分のことで、これらをイメージしたタイル壁画アートやオブジェなどが散歩道沿いにあります。
(以下のサムネイル画像はクリックで拡大します)
雨水・啓蟄 | 立夏 |
穀雨 | 夏至 |
小暑 | 大暑 |
立秋 | 処暑 |
白露 | 秋分 |
寒露 | 所々に色々なオブジェ |
立春 | 春分 |
小満 | 途中には幸福花園という公園がある |
のんびりと散歩できるコースですが、周りを見ると結構色々あります。
歩道の片側はこんな感じの農村地帯。日本と変わらない風景です。
俗女養成記のロケ地案内もありました。この辺りは赤レンガの家が多いです。
5つの神様が守る菁寮
村の5ヶ所に小祠があり、5つの神様が祀られているとともに村の守護神となっているようです。
いわゆる四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)に螣蛇(とうだ)という神様をプラスしたものです。
どれがどれなのかいまいちわからない上に、4つしか発見できませんでしたが、(適当な地図ですが)上の画像のような場所に祀られています。
気になる人は探してみてください。
菁寮聖十字架天主堂
この特徴的なとんがり屋根の教会は1960年に建設されたカトリックの教会です。
ドイツのゴットフリート・ベームという建築家が設計した教会で、1986年にプリツカー賞を受賞。
プリツカー賞は「建築界のノーベル賞」とも言われる権威ある賞で、アメリカの大手ホテルを持つプリツカー家のハイアット財団が運営する。
内部の参観も可能ですので、建築やキリスト教に興味のある方は行ってみてください。
菁寮國小
教会の向かい側には小学校があります。入口に観光案内図があるのはなかなかユニーク。
上の画像の中正堂と書いてある中央の建物は日本統治時代の建築だそうです。勝手に学校の敷地内には入れませんが、外から見ることは可能です。
三合院建築
菁寮の個人宅は村の中心部を除き多くは平屋であり、木造かレンガ造の家が多いのが特徴です。
中でも三合院建築と呼ばれる家が目立ちます。
三合院建築とは
台湾の伝統的な建築様式で、三方を建物で囲み「コ」の字型に家屋が配置されているのが特徴。
中庭では農作業をしたり、洗濯物を干したり、穀物を干したり、植木鉢を並べたりします。
広い敷地が必要なので台湾でも都心部にはほぼありませんが、地方の民家や寺廟で散見されます。
私もここに来て初めて見ました。台湾に何度も来て色々なところに行っていても、台湾のこのような伝統的な風景はなかなか見ることができないのかもしれません。
富貴食堂と和興冰菓部
富貴食堂と和興冰菓部は菁寮老街周辺で最も有名なお店です。
農作業中の食事である割稻飯というメニューがある富貴食堂ですが、営業時間が短い上に不定休のため、食べられたらラッキーくらいの感覚でした。
それでも食べるつもりで行きましたが、諸事情で菁寮老街に行く時間が2時間も後ろ倒しになったため、とうに営業時間を過ぎていました。当然ながら閉店。残念。
和興冰菓部は1934年創業ですので、90年前から営業するかき氷屋さん。
店内もメニューもレトロ感抜群で観光客に人気でしたが、ここのところ臨時休業が続いており、私が行った時も営業していませんでした。これも残念。
義昌碾米廠
精米所です。義昌碾米廠では昔の精米器を見ることができます。見学は無料です。
なかなかこんな精米器は見ることができませんね。
後述しますが、菁寮老街は漁師網バッグの産地でもあり、このように日常的に使われています。
萬味香醬園
醤油はこのように造るんですね。私は知りませんでした。
ここは醤油を醸造するだけでなく店舗があり、ここで造られた醤油が販売されています。
お店は菁寮老街のメイン通りにあります。
阿牛柑仔店
村で唯一のお菓子屋さんです。駄菓子屋に近く、子供が喜びそうな安いお菓子や飲料が売っています。
茄芷工坊
人気の漁師網バッグ販売店兼製造所である茄芷工坊。
日本人にも人気の漁師網バッグですが、実はここがふるさと。台北の土産店などで売っている漁師網バッグもここで製造されているものが多いようです。
私が行ったときも台北の有名雑貨店「来好」のタグを付けた漁師網バッグを造っていました。
定番のトートバッグの他にも大小様々なポーチや小銭入れ、ペンケースなど色柄もたくさんあります。
リュックや花柄をモチーフにしたトートバッグやショルダーバッグなどもあります。
事前に予約すればオーダーも可能だそう。
このお店で販売している漁師網バッグには全て「茄芷工坊」のタグが付いていますので、同じような色柄でも他のメーカーとの差別化ができています。ブランドですね。
菁寮老街には他にも漁師網バッグを販売する土産店などが散見されますが、どうせ買うならこのお店がおすすめです。
台湾ウォーキングストアに何点か出品していますので、ぜひご覧ください。
荷蘭井湧泉民宿
民宿もあります。宿泊するならここです。食事も提供しています。
この民宿の前にはオランダ統治時代から300年以上経過し、しかも現在も使われている井戸があります。
バケツがあったりして、生活感が溢れていますね。
無米樂菁寮嫁妝老街
民宿の前が何やら賑やかになりました。
冒頭でも言及しましたが、菁寮は嫁入り街として有名であったため、それを模したイベントが開催されるようです。
台南はかつての台湾の首都であり、台湾の嫁入りの伝統的な習俗はこの台南の嫁入りを基本としています。
現在実際にこんな嫁入り儀式を行う人はいないでしょうけど、かつてはこんな感じであったということ。
嫁入りのコスプレをして、家財道具を牛車に載せて、親類一同と練り歩くこの嫁入りイベント。
拡声器を使って囃し立てる先頭の人がいるため、老街のほとんどの観光客が集まり、大賑わい。
このイベントの開催日時はよくわかりませんが、参列希望者が集まると開催するのかもしれません。
金徳興中薬鋪
TVドラマ俗女養成記の舞台となったのがここです。約250年前に建てられた木造建築。
元は薬局ですが、阮家古厝(阮さんの古い家)とも呼ばれ、阮さんが実際に住んでいます。
台湾人が大挙して記念撮影をしていました。内部も観覧できるようでしたが、私はそこまで興味ないので外から眺めるだけにしておきました。
稻稻來
こちらは門から奥に進むとパン屋さんがあります。米を使ったパンのようです。かつては村長さんのお宅だったとか。
ここに観光客が自由に使えるトイレもあります。トイレは菁寮バス停脇や観光案内所にもあります。
セブンイレブン菁寮門市と後壁區農會菁寮辦事處
菁寮で唯一のチェーン店であり、唯一のコンビニ。コンビニがあることで妙な安心感があります。
隣のユニークな建物は後壁區農會菁寮辦事處。日本で言う農協みたいなものでしょうか。
穀倉をイメージした塔のようなデザインで、質素な村では異質感が漂いますが、ランドマーク的な建物になっています。
ちなみにここの前に菁寮バス停があります。トイレは道路の向かい側。
菁寮公有零售市場
菁寮唯一の市場。いくつかの小さな飲食店や屋台があります。
菁寮囝仔
煎餅など乾物を売るお店です。
このお店はインカムとスピーカーを使って、試食品を配りながら接客、販売するというスタイルで、お店からかなり離れたところにいても試食品を渡されます(笑)。
素朴な味わいの煎餅で美味しいのですが、嵩張りそうなので購入はやめました。
創意花布寢飾生活館
老街の入口にある寝具屋さん。いかにも台湾風の花布を使った枕の他、バッグなども販売しています。
無米樂旅遊服務中心
立派な門の観光案内所があります。建物横にはトイレもあるので、自由に利用できます。
実は私ははるばる菁寮老街までやってきたは良いのですが、一つ大きな失敗をしてしまいました。帰りのバスです。
もちろん帰りのバスの時間は確認していて、時刻表の5分前に菁寮バス停に到着し、待っていました。
しかし5分経っても10分経っても、20分経ってもバスが来ないのです。
その間、「どうせ遅れてるんだろうから、その内到着するだろう」と思ってお菓子を食べていました。
さすがに遅いと思って調べてみたら、何と定刻より7分前にバスが出発していたのです!
台湾のバス注意ポイント
日本も台湾もバスは遅れることがよくあります。これは交通事情や道路工事、天候などの影響で仕方ありません。
しかし日本では定刻より早くバスが出発することはありません。早く到着してしまうことがあってもそこで時間調整をします。
一方で台湾では早く到着してしまったら、そのまま早く出発してしまうのです。
観光案内所でタクシーを呼べます
日本の常識が他国でも常識とは限りません。これは私のミス。そして次のバスは2時間先。この後予定もあったので、最悪歩いて後壁駅に行くことも考えましたが、名案が浮かびました。
観光案内所でタクシーを呼んでもらおう!きっと呼んでくれるはず!という思いつきです。
菁寮は田舎です。Uberはおろか、流しのタクシーすら皆無です。タクシーは呼ばなくては来ません。
そこで、観光案内所で聞いてみると、すごく親切に対応してくれて、数分でタクシーが到着しました。助かりました。
ちなみに案内所の中には魚頭君のオブジェがあったり、休憩スペースと冷水機、そしてお土産も少し販売しています。
菁寮老街とその周辺の様子
ここからは適当に写真を上げていきます。雰囲気を味わってください。
何が干してあるんだろう?カラスミかな?と思いましたが、違うようです。麺のように見えました。乾麺?
赤いランタンに平安というイメージで手書きされたシャッターアート。手作業で塗装したことに魅力を感じます。
老街には木造建築が多いですが、少し外れると住宅街で、このような赤レンガの家が多いです。
個人宅というよりは何か公的な施設か会社だったような建物。雑草だらけなので、今は使われていない様子。
老街には通常のお店以外に露店や屋台も数多く出店していて、結構楽しいです。
漁師網バッグは菁寮の名産品でもあるので、色んなところで販売しています。
外国人観光客は買わないだろうけど、地元民や車で来ている台湾人観光客を相手に野菜も売ります。
コーヒーやアイスを売るお店。露店とはいえこれはちょっとオシャレ。
老街にはこのような木造の平屋の建物が多めで、軽飲食店やお土産物店が並びます。
小休憩できるドリンクスタンドもあります。
欧米人も見かけませんし、日本語も聞こえず、日本人らしき人も見かけませんでした。
お店でも観光案内所でも日本語は全く通じません。
日本人にはまだあまり知られていない観光地ですが、ご覧のように台湾人には人気なのです。
菁寮老街まとめ
大きすぎず散策に丁度良い規模の老街なので、観光にも最適ですが、アクセスだけ少々難易度高いかもしれません。
ココがポイント
日本統治時代もしくはそれ以前の木造建築が残る珍しい老街です。まだ日本人にあまり知られていませんが台湾人には人気の観光地。
行き帰りのバスの時刻は事前に確認し、バス停にも早めに到着しておくことが注意事項。
冒頭で言及しましたが、台湾には古い街並みが残る老街がたくさんあります。
あなたも老街巡りしてみませんか?
→ 【台湾老街ランキング】データで判明した楽しすぎる老街はココです
海外旅行保険に加入していますか?怪我も病気も無料で保証できる海外旅行保険があります。