
台湾には日本人が祀られている寺廟が50ヶ所以上あると言われています。
そんな日本人が祀られている寺廟を題材にしたドキュメンタリー映画が上映されるということで、早速観てきました。
台湾が好きな人、特に台湾の寺廟に興味のある人にはぜひ一度観てほしい映画でした。
このページでは映画の感想と、紹介されている5つの廟の物語をまとめています。
「軍服を着た神様」を観た感想
大きな映画館ではやっていないかもしれないし、都会ならともかく、地方ではなかなか観ることができないかもしれませんが、私は那覇市の桜坂劇場で観てきました。

上映している映画館が近くにない人は、その内DVDが発売されたり、どこかのチャンネルで放送すると思いますので、それまで待ちましょう。
映画の詳細は、私が説明するよりも、上記の公式サイトを見た方が早いし、確実です。
50ヶ所以上あるという日本人が祀られた廟の内、5ヶ所の寺廟がピックアップされていましたが、なぜこの5ヶ所を選んだのかはわかりません。
比較的有名な高雄市の紅毛港保安堂や嘉義県の富安宮などは、全く触れられず、後述する5ヶ所が紹介されました。
それぞれの場所を訪ねて、そこの管理者や関係者に、誰がなぜ祀られているのかを丁寧にインタビューしていく内容。
寺廟の様子だけでなく、付近や移動中の様子も映されたりするので、台湾が好きな人なら、それだけで楽しいと思います。
なぜ日本人が祀られることになったのかは、それぞれ事情は違いますが、そもそも日本人が祀られているというだけで、日本人なら興味が湧きますよね。
これらの廟は日本との繋がりを大切にしていますし、日本の遺族と交流がある廟もあります。結果的に日本と台湾の友好の架け橋となっているのです。
私は紹介された5ヶ所の中では、飛虎将軍廟しか行ったことはなく、他の4ヶ所は行ったことはありませんでしたが、いつか訪ねてみたくなります。
台湾の、特に寺廟巡りが好きなら、きっとみんなそう思う。そんな内容でした。
聖地巡礼!「軍服を着た神様」5つの廟のロケ地詳細
さて、映画で紹介された5ヶ所は下記ですが、ロケ地巡りで訪れたい人もいると思いますし、映画を観ていない人は、どんなところが紹介されたのだろうと興味もあると思いますので、記載しておきます。
① 先鋒祠(樋口勝見)

所在地:屏東縣枋寮郷隆山村中正大路66號「枋寮龍安寺」境内
祭神:樋口勝見(ひぐち かつみ)/大日本帝国海軍・上等機関兵曹。1944年(昭和19年)10月25日、レイテ沖海戦(エンガノ岬沖海戦)で戦死。当時搭乗していたのは駆逐艦「初月(はづき)」。享年29歳。
由緒:1985年7月のある晩、地元漁師の張渓発氏が龍安寺付近の海で夜間漁をしていたところ、海上に不審な赤い灯を見つけた。網の中に日本人の位牌のようなものが引っかかり、不気味に思って海に投げ捨てたが、3度続けて同じ場所で網にかかった。
位牌には「故 海軍上等機関兵曹 樋口勝見 霊」と記されていた。龍安寺の観音菩薩に伺いを立てたところ、この霊は寺に留まり観音菩薩のもとで修行し、寺を守る「先鋒」となることを望んでいるとのお告げがあり、本堂前に小さな祠を建てて祀ったのが「先鋒祠」の由来。その後、位牌に記された住所を手がかりに日本の遺族(姉と弟)の存在も確認された。
② 鎮安堂飛虎将軍廟(杉浦茂峰)

所在地:臺南市安南區理想里大安街730-1號
祭神:杉浦茂峰(すぎうら しげみね)/大日本帝国海軍航空隊、戦死後に少尉を追贈。茨城県水戸市出身、1923年11月9日生〜1944年10月12日没(享年21歳)。
由緒:1944年、台湾に配属されていた杉浦茂峰兵曹長は零式艦上戦闘機に搭乗し台湾沖航空戦に出撃。10月12日午前、台南上空で米軍機と交戦し撃墜された。彼は集落への墜落を避けるため郊外まで機体を操縦してから脱出したが、落下傘で降下中に機銃掃射を受け戦死した。
戦後、村では白い軍服姿の若い日本人海軍軍人が枕元に立つ夢を見たという住民が相次いだ。地元では彼が身を犠牲にして村を救ったと信じられ、1971年に鎮魂と感謝の意を込めて祠が建立された(「飛虎」は戦闘機、「将軍」は敬称)。
1993年に現在の廟に改築。現在も朝夕に「君が代」「海行かば」が流され、愛煙家だったとされる杉浦氏にタバコが供えられている。
参考:この中では唯一私が参拝したことがある廟。杉浦茂峰氏をきっかけとして台南市と水戸市は現在、友好交流都市となりました(水戸市-台南市との交流及び「台南通り」について)。
杉浦氏は悲しい最期でしたが、こうして死後は日本と台湾の友好の架け橋になっているのです。
→ 【台南市】鎮安堂飛虎将軍廟は台湾でも珍しい日本人を祀る立派な廟
③ 東龍宮(田中将軍・北川将軍他)

所在地:〒940-0049 屏東縣枋寮郷隆山村僑德路199號
祭神:田中綱常将軍(主神)、北川直征将軍、乃木希典大将、看護師の中山其美・良山秋子の計5柱。田中綱常は1874年の台湾出兵に参加した軍人で、後に台北県知事や貴族院議員などを歴任。
北川直征は台湾出兵で戦死した最初の日本兵とされる。乃木希典は1895年の下関条約後、枋寮に上陸した縁がある。中山・良山の2名については実在の人物であったか現在も判明していない。
由緒:廟の宮主である女性道士・石羅界氏が屏東在住時に田中綱常からのお告げを受けたのが始まりで、1996年(平成8年)に現在地の枋寮で廟を建てるようお告げがあり、地元実業家の寄付と私財により建立された。
田中綱常は薩摩藩士出身で明治維新後に陸軍、後に海軍に転じた人物。1890年には軍艦「比叡」艦長としてエルトゥールル号事件の遭難者をトルコへ送還した功績でも知られる。台湾では「田中将軍廟」の通称でも呼ばれる。
④ 霊聖堂(三船太郎・山下敏郎他)

All rights reserved by hinac(Ui-Han,Tan)所在地:屏東縣東港鎮船頭里船頭路國宅巷5-1號
祭神:地蔵菩薩の他に、日本人として三船太郎(日本将軍)、山下敏郎(大使/軍医)、山下久美(大使の娘・女医、三船太郎の許嫁)※映画では「山下」とされているが、「山村」という説もある。
由緒:日本統治時代、大鵬灣を南進基地としていた日本軍が、この場所に軍人用の火葬場を設けていた。戦後、火葬場跡には焼却炉一基のみが残され、地元では不吉な場所として恐れられていた。
1990年代末、廟祝の陳賢源氏の元に三船太郎将軍が現れ、自分と大使・山下敏郎、300名以上の将兵が搭乗した艦船が鵝鑾鼻沖で米軍に撃沈され、遺体がこの地で火葬されたことを告げ、廟を建てて祀ってほしいと望んだとされる。
これを受けて火葬場跡に鉄皮屋根の祭壇が建てられ、後に東港慈雲乾坤宮とその誦経団が資金を集めて整備し、2005年7月30日(旧暦6月25日)に現在の廟として落成した。
⑤ 十二将軍廟(将軍爺)
所在地:台南市学甲区内(正確な住所不明)
祭神:将軍爺と総称される、太平洋戦争末期に米軍機に撃墜されたとされる日本人12名。
由緒:墜落しつつあった機体が人の少ない方向へと向かったという言い伝えがあり、パイロットが村人の危険を回避しようとしたのではないかと語り継がれている。地元の人でも半数の人は知らないという、小さな廟。
参考:映画では「十二将軍廟」と言われていました。正式名称は不明ですが、Google Mapでは「學甲將軍廟」という表示になっています。
ちなみに、写真を見る限りここと似ているけど、やはり違う、そして場所も違う「苓仔寮十二勇士廟」(台南市將軍區苓仔寮里)という陰廟を発見しました。由緒は全く同じ。
謎ですが、このような謂れのある廟は結構多いようです。映画でも、他にもこのような廟がある、というお話も少しありましたね。
なお、今回紹介された5ヶ所の中ではここだけ神像がありません。明らかに陰神であり、陰廟のままです。
台湾の寺廟はなぜ日本人を祀るのか?
日本人の感覚からすると、外国人を自国の宗教施設で祀るというのは若干違和感があったりします。
この映画にピックアップされている寺廟もそうですが、「親日だから」というのは、ほとんど関係ありません。
実はお国柄、国民性の違い、宗教観の違いが根底にはあります。
台湾は、街中や海で人骨を見つけたりすると、祀るという習慣が昔からあります。
こういうことがあると、小さな祠を作って祀ります。ここで「祀る」のはあくまで、「祟られないようにする」ためです。
しかしこのような祠も、近所の人が世話をし、お参りするようになることがあります。そうなると、やがて「あそこで願い事が叶った」という話が出てきて、寄付が増えてきて、小さな祠は徐々に立派な大きい廟になってくるのです。
映画でも言及がありましたが、祀られた神様は修行をし、レベルアップしていくのです。
王爺や媽祖などの神様を最初から祀る廟は陽廟と言いますが、このような無縁仏や身元不明の遺体などが起源だった廟は陰廟と言います。
映画でピックアップされた5ヶ所を含め、日本人が祀られている廟は基本的に陰廟ですが、廟が大きくなり、道教や仏教の他の神様と一緒に祀られるようになると陽廟になります。
陽廟、陰廟など台湾の宗教について、興味ある方は下記を読んでみてください。
→ 台湾の「廟」とは?道教、仏教、儒教そして民間信仰について解説
また、台湾では仏教、道教、儒教、民間信仰がごちゃ混ぜになっている背景もあり、非業の死を遂げた、身寄りのない霊を祀るという、台湾にもともとあった枠組みに、たまたま日本人が当てはまった、という解釈がしっくりきます。
映画は、私のために作ったのかというレベルで興味深かったですが、日本人が祀られるという、この辺の根本的な宗教観の違いにあまり言及がなかったのは少々残念でした。
こういった話があれば、台湾に馴染みのない鑑賞者にも、もっと理解が深められたのにな、と思いました。
もっと、台湾の廟について詳しく知りたい人は、拙著をどうぞ。Kindleで販売中です。
Kindleの「道教」有料本ジャンルでベストセラー1位を記録しました。(2026年10月20日現在)
どんな本なの?という人は概略を記事にしていますので、まずは記事を読んでみてください。
「なぜ台湾人は日本人を神にしたのか(仮)」出版準備中
台湾では日本人を祀る廟が50ヶ所以上ある、という話ですが、ではその50ヶ所はどこ?となると、まとめてある記事はweb上にはなかなかないようです。
いくつかをまとめていたり、単独で記事になっていたりはします。でも、いくら調べても、AIに聞いても50ヶ所もないんです。
現在、この50ヶ所を調査中です。日本だけでなく、台湾のネット上の情報、国立図書館などにあるかなり古い情報、絶版の書籍なども含め、情報を探しています。
だって、聞いたこともない道教の神様を祀る廟で参拝するより、日本人が祀られている廟が近くにもしあるのなら、そちらで参拝したいと思いませんか?
個人的には大変興味深いです。
なので、現在「なぜ台湾人は日本人を神にしたのか(仮)」を執筆中で、情報がまとまり次第、この50ヶ所以上あるという廟を公開します。
そして、同時並行で「義愛公:台湾で神になった日本人巡査・森川清治郎の物語(仮)」という小説も出版準備中。こちらは事実を元にしたセミフィクションです。
両方とも、なんとか年内にはKindleで出版予定ですが、ひょっとしたら来年になるかもしれません。出版時はこのブログでお知らせします。
映画「軍服を着た神様」まとめ

いつかこの5ヶ所を含め、場所がわかっている50ヶ所ほどの寺廟を巡ってみたいという気がします。
時間とお金がかかるのでなかなか難しいですが、機会があれば、少しでも訪ねてみたいと思います。
これらの廟は「日本人だから祀った」というわけではないものが多いですが、結果として、日本の子孫そして多くの日本人の知るところとなり、日台友好の架け橋となっている形。
やはり、台湾と日本は特別な絆がありそうです。
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