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台北新四国八十八ヶ所霊場1番札所台北天后宮の弘法大師像と石仏

2023年10月22日

台湾にもあった写し四国霊場「台北新四國八十八所靈場」

台北天后宮の弘法大師像

台北天后宮の弘法大師像

台北新四国八十八ヶ所霊場。

台湾に四国霊場がある?そんな話を聞いたことがありますか?一体何故台湾に四国霊場があるのでしょう?

日本でまともにブログやメディアで取り上げて、こうして記事にしている人はほとんどいません。

しかし異国に残る貴重な遍路の史跡です。

今回から数回に分けて台北新四国八十八ヶ所を特集し、日本での認知度を上げたいと思っています。

感謝!

記事作成において、貴重な資料と助言を愛媛大学四国遍路・世界の巡礼研究センターの中川准教授からいただきました。

愛媛大学四国遍路・世界の巡礼研究センター

中川准教授からのご指導があったからこそ、台北に現地取材に行きましたし、この記事を書くきっかけとなりました。

この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございました。

また記事作成にあたり以下を参考文献とさせていただきました。

林承緯著「宗教造型與民俗傳承」

王曉鈴著「從弘法寺到天后宮」

三九郎著「臺北新四國八十八箇所巡禮の記」(1934年)

宮地硬介著「臺北新四國八十八個所巡禮」(1937年)

これらの本は台北新四国八十八ヶ所霊場をはじめ台湾各地の巡礼霊場や、日本統治時代の台湾の宗教について深く書かれた本で、いわばバイブル的な本です。

この記事は愛媛大学様の情報と資料、そして上記の書籍を基に、ネット上にある最新の台湾の情報を追加し、実際の現地の情報も交えながら書きました。

そもそも四国八十八ヶ所霊場とは

四国八十八ヶ所霊場1番札所霊山寺

四国八十八ヶ所霊場1番札所霊山寺

四国八十八ヶ所霊場というものが存在することは、行ったことがなくても多くの日本人は知識として聞いたことはあると思います。

公式サイトはこちら。

四国4県にある弘法大師ゆかりの寺院を巡る四国八十八ヶ所霊場は長い歴史がありますが、盛んになり全国に知れ渡ったのは江戸時代です。

しかし、江戸時代に四国八十八ヶ所を巡拝するのは至難の業で、例えば江戸に住んでいる庶民は四国まで辿り着くことさえ、現実的にはまず無理でした。

信心深い江戸の人は伊勢詣、大山詣、富士山信仰などもありましたが、どれも現実には難易度は高く、四国八十八ヶ所はそれらよりもさらに難易度は高く、完全に無理ゲーでした。

そして例え四国まで行けたとしても、地図もなく、店も宿もほとんどなく、草履を履き、目印の石碑だけを頼りに山道を歩く当時の四国巡礼は死と隣り合わせで、実際に多くの遍路が行き倒れで亡くなっています(遍路墓もたくさん残っています)。

しかし四国八十八ヶ所への憧憬は強く、結局四国八十八ヶ所を模した霊場が江戸だけでなく全国各地に次々と創設されました

丁度富士山信仰があるにも関わらず現実的にはなかなか行けないので、近所に富士山を模した富士塚を築造した心理と似ています。

近年になり創設されたものを含めると、今でも北海道から九州まで130ヶ所以上の写し四国(地四国・新四国・準四国などとも言います)が現存します。

例えば3大写し霊場と言われる福岡の篠栗、愛知の知多、香川の小豆島、東京でいえば御府内といった場所があり、それぞれの地域で古くから巡拝が盛んでした。

そして実は台湾にも写し四国があったのです。

台北に四国霊場があったことを知った経緯

私はこんなブログをやっていることからわかるように台湾が大好きです。

そして四国八十八ヶ所も大好きで、実際に歩いて巡拝したことがあります。もうほとんど更新していませんが、当時のブログもあります。

さて、2023年10月19日から2泊で台北に行く予定だった私は、10月初頭にはどこに行くか予定を全て決めていました。

そんな折、出発10日ほど前にたまたまYouTubeを見ていたら、おすすめの動画で流れてきた映像を見て驚愕しました。

「台北・・・・・・新四國・・・八十八箇所石佛・・・・・ん?え?えぇぇぇぇぇ?な、何ぃ????」

台湾や四国八十八ヶ所の動画をかなり見ていたので、YouTube側がおすすめに流してきたのでしょう。だからこそ気がついたのです。ありがとうYouTube。

一瞬にして私は悟りました。「台湾にも写し四国があったんだ!」と。

そして台北に行く予定の内容を大幅に変更して、可能な限り現在残されている石仏を見てくることにしました。

台北新四国八十八ヶ所霊場とは

台北天后宮(旧弘法寺)

台北天后宮(旧弘法寺)

台北新四国八十八ヶ所は日本統治時代の1925年から1945年まで存在していました。20年間のみです。

しかしネットで調べる限り、日本のサイトやブログでは非常に情報が少なく、知りたいことも調べられない状況でした。日本国内の関連書籍など皆無です。

一方台湾の書籍やサイト、ブログ、SNS、YouTubeではいくつか関連する内容の情報を見つけ、情報を整理してみましたので、これから紹介したいと思います。

台北新四国八十八ヶ所霊場の創設から消滅まで

下のFacebookの引用は当時の台湾での新聞記事です。

 

日本統治時代の1923年、台北にあった弘法寺というお寺の信徒だった鎌野芳松、平尾伊三郎、大神久吉、二宮実太郎、尾崎弥三郎らが発起人となり、台湾にも四国八十八ヶ所霊場を創設しようと活動を始めました。

ちなみに平尾、大神、二宮の3氏は四国の出身だったそうです。

そして1925年、台湾総督府の認可が下り、正式に台北新四国八十八ヶ所が創設されました

弘法寺(臺灣全臺寺院齋堂名蹟寶鑑1932年)

弘法寺(臺灣全臺寺院齋堂名蹟寶鑑1932年)/ 国立台湾図書館

四国八十八ヶ所の札所である各寺院の御本尊の石仏を造り、それを台北市内から北投まで設置。

コースとしては台北中心地から士林を抜け、陽明山に入り、竹子湖から北投に向かう全長約50km程度でしょうか。徒歩または一部区間は電車に乗り巡拝したそうです。2〜4日で巡拝するのが一般的で、お遍路ツアーもあったようです。

100名余りで参加したという当時の巡礼ツアーを記録した三九郎の手記(臺北新四國八十八箇所巡禮の記)によると、初日は弘法寺から臨済護国禅寺まで。

ここで一度解散し、各自適当な宿に宿泊したようです。翌日はバスで台北駅に向かい、皆と合流し、電車で士林駅へ。

芝山巌に向かい、草山(陽明山)を歩いて、団体は多喜の湯、巴旅館、若草屋といった温泉宿に分散して宿泊したそうです。(巴旅館は史跡として現存)

翌日は72番まで歩き、北投星乃湯温泉に宿泊。3泊4日で結願するツアーだったようです。

1931年の巴旅館

1931年当時の巴旅館(出典:国立台湾大学)

1番札所は弘法寺(現在の台北天后宮)で、結願の88番札所は北投鐡真院(現在の北投普済寺)でしたが、結願後に1番札所にお礼参りしていたりもしたそうです。

四国八十八ヶ所でも大窪寺で結願後に霊山寺にお礼参りに行く人は多いです。それと同じですね。

お遍路は日本と同じように同行二人と書かれた菅笠を被り、白衣を着て、金剛杖を持ち歩いたそうで、ツアーも実施されていた上に、お接待の文化まであったというから驚きです。

特徴としては真言宗に限らず、臨済宗、浄土宗、天台宗、曹洞宗あるいは神社などの宗教施設が札所になり石仏を置き、そしてそれら以外は道路沿いに置かれていたことです。(ただし神社は豊川稲荷なので仏教系)

当時、日本から多くの仏教関係者が台湾に布教に行き、各地に各宗派の施設が建立された背景があります。

仏教の宗派は関係なく、四国遍路を盛り上げていこうとする当時の日本人たちの様子が想像できます。

しかし1945年日本統治時代が終了したことから、石仏を管理していた日本人も日本に帰国せざるを得なくなり、事実上消滅してしまいます。

異国に残る四国霊場

  • 台湾では花蓮県にも1ヶ所で巡拝できる写し四国があり、こちらは吉安慶修院(旧吉野村真言宗布教所)と言うお寺に今も石仏が現存しています。ちなみにこの吉野村は徳島県吉野川周辺の住民が多く移住した地域でした。
  • 韓国にも実は四国霊場があったそうで、一部には当時の石仏などが残っているそうです。しかし日本統治時代のものを残す風潮がなかった韓国なので、まだその研究は進んでいないようです。
  • 台湾には写し四国霊場の他に西国三十三ヶ所観音霊場の写し霊場が台北、宜蘭、基隆、新竹にありました。それぞれ現在でもその一部の石仏が残されています。また2010年には初めて南部の高雄でも石仏が1体だけ発見され、調査が進んでいます。詳細はこちら

「台北新四国八十八ヶ所霊場」当時の札所の詳細と現在

台北天后宮

台北天后宮

札所の中には現存している場所もありますが、88体あった石仏の過半数は所在が不明になっています。

元からの場所に現存しているケースは少なく、多くは移設されています。

2012年の調査時は31体でしたが、その後の調査で2023年現在石仏の存在が確認されているのは39体です。

ただし画像などの証拠はないものの、ここにあるという情報はいくつかあり、それらを含めると40体を超える石仏が現存している可能性があります。

(下記の表は見にくくてすみませんが、横スクロールします。)

札所寺院名ご本尊当時の場所現存現在の状況
1番霊山寺釈迦如来新高野山弘法寺台北天后宮。1番、2番の石仏そして弘法大師像が現存。
2番極楽寺阿弥陀如来天台宗台北布教所新富町にあった布教所と推察されている。石仏は台北天后宮に現存。
3番金泉寺釈迦三尊台北稲荷神社(萬華豊川稲荷)台北第二殯儀館近くの念佛寺に安置されていたが、最近念佛寺が廃寺となったため誰が保管しているのか不明?
4番大日寺大日如来新富町不動尊 新富町(龍山寺東側)にあった町。現在の萬華駅前街道脇。
5番地蔵寺勝軍地蔵菩薩 
6番安楽寺薬師如来曹洞宗台北別院 東和禅寺。
7番十楽寺阿弥陀如来大正街公園 現在の中山区林森北路60號付近。
8番熊谷寺千手観世音菩薩三板橋墓地 現在の中山区森林公園・康楽公園
9番法輪寺涅槃釈迦如来 
10番切幡寺千手観世音菩薩 
11番藤井寺薬師如来臨濟護國禪寺臨済宗護国禅寺に現存。11番、12番、13番、16番、18番、75番、78番、79番、80番が現存。
12番焼山寺虚空蔵菩薩臨済宗護国禅寺に現存。
13番大日寺十一面観世音菩薩臨済宗護国禅寺に現存。
14番常楽寺弥勒菩薩  
15番国分寺薬師如来浄土宗布教所(台北開教院/圓山忠魂堂) 現在の浄土宗善導寺。
16番観音寺千手観世音菩薩1934年には曹洞宗別院出張所に移設。現在は臨済宗護国禅寺に現存。
17番井戸寺七仏薬師如来  
18番恩山寺薬師如来1934年には臨済宗護国禅寺に移設、そのまま現存。
19番立江寺延命地蔵菩薩芝山巖

正願禅寺に現存。正願禅寺に現存するのは19番、22番、28番、31番?、34番、36番、37番、38番及び弘法大師像2体。

20番鶴林寺地蔵菩薩  
21番太龍寺虚空蔵菩薩  
22番平等寺薬師如来正願禅寺に現存。
23番薬王寺薬師如来  
24番最御崎寺虚空蔵菩薩  
25番津照寺楫取地蔵菩薩  
26番金剛頂寺薬師如来  
27番神峯寺十一面観世音菩薩国立台湾歴史博物館所蔵。
28番大日寺金剛界大日如来正願禅寺に現存。
29番国分寺千手観世音菩薩アメリカのミシガン州個人宅で収蔵。
30番善楽寺阿弥陀如来  
31番竹林寺文殊菩薩アメリカのミシガン州個人宅で収蔵。正願禅寺に文殊菩薩の石仏があるが、番号や寺院名がない。
32番禅師峰寺十一面観世音菩薩  
33番雪蹊寺薬師如来  
34番種間寺薬師如来正願禅寺に現存。
35番清瀧寺薬師如来  
36番青龍寺波切不動明王草山道路(士林〜草山)正願禅寺に現存。

37番岩本寺阿弥陀如来正願禅寺に現存。
38番金剛福寺三面千手観世音菩薩正願禅寺に現存。
39番延光寺薬師如来仰德大道にある民家が所蔵という説あり。
40番観自在寺薬師如来北投文物館に現存。
41番龍光寺十一面観世音菩薩  
42番仏木寺大日如来  
43番明石寺千手観世音菩薩国立台湾歴史博物館所蔵。
44番大宝寺十一面観世音菩薩草山多喜橋格致路にある山頂というレストラン敷地内。しかし閉店してしまったため入れない。
45番岩屋寺不動明王草山多喜湯陽明山に弘法大師像とともに現存(台北市北投區陽明路一段23號付近、小さな建物の後方)
46番浄瑠璃寺薬師如来草山道路(草山〜竹湖湖)陽明山に現存(陽明路一段80號の民家敷地内)
47番八坂寺阿弥陀如来  
48番西林寺十一面観世音菩薩陽明山の個人宅内に弘法大師と並んで安置
49番浄土寺釈迦如来国立台湾歴史博物館に所蔵。
50番繁多寺薬師如来以文堂別莊(松田別莊)  
51番石手寺薬師如来陽明山に現存(台北市士林區平菁街10巷にある廟祠内)
52番太山寺十一面観世音菩薩  
53番円明寺阿弥陀如来台灣教育會療養所中山樓付近に現存の情報あり。
54番延命寺不動明王竹子湖  
55番南光坊大通智勝如来陽明山の個人宅内にある?
56番泰山寺地蔵菩薩陽明山に現存(胡宗南将軍墓の近く枝子寮埔古道)
57番栄福寺阿弥陀如来  
58番仙遊寺千手観世音菩薩竹子湖駐在所右側陽明山の個人宅内にある?
59番国分寺薬師瑠璃光如来竹子湖  
60番横峰寺大日如来弘法寺草山別院 現在はマンションになっており遺失。
61番香園寺大日如来 
62番宝寿寺十一面観世音菩薩紗帽山(草山〜北投)  
63番吉祥寺毘沙門天  
64番前神寺阿弥陀如来陽明山に現存(菁山路99巷75號)。
65番三角寺十一面観世音菩薩現存の情報あり。
66番雲辺寺千手観世音菩薩北投文物館に現存。
67番大興寺薬師如来  
68番神恵院阿弥陀仏如来台北市北投区湖山里紗帽路3號にある寶山建設招待所(別荘)敷地内洞窟に現存。
69番観音寺聖観世音菩薩個人宅に現存。
70番本山寺馬頭観世音菩薩北投地熱谷北投櫻崗温泉会館に現存。
71番弥谷寺千手観世音菩薩北投松本別莊  
72番曼荼羅寺大日如来北投星乃湯温泉旅館付近  
73番出釈迦寺釈迦如来  
74番甲山寺薬師如来  
75番善通寺薬師如来臨済宗護国禅寺に現存。
76番金倉寺薬師如来  
77番道隆寺薬師如来  
78番郷照寺阿弥陀如来臨済宗護国禅寺に現存。
79番天皇寺十一面観世音菩薩臨済宗護国禅寺に現存。
80番国分寺十一面千手観世音菩薩臨済宗護国禅寺に現存。
81番白峯寺千手観世音菩薩北投〜大師山北投龍雲寺に現存。
82番根香寺千手千眼観世音菩薩  
83番一宮寺聖観世音菩薩  
84番屋島寺十一面千手観世音菩薩  
85番八栗寺聖観世音菩薩  
86番志度寺十一面観世音菩薩大師山(87番は弘法大師石窟付近)。戦後に北投善光寺現存の情報あるも盗まれたという情報もあり。
87番長尾寺聖観世音菩薩個人宅に現存。
88番大窪寺薬師如来北投鐵真院北投普濟寺に現存。

参考

  • 15番〜18番の浄土宗布教所は当初は現在の台北市立美術館付近にありましたが、石仏は1929年の布教所の移転と一緒に現在地に移設されたと推察されます。
  • 草山(そうざん)とは現在の陽明山のことです。
  • 「国立歴史博物館」が所蔵しているとされている3体ですが、同名の博物館が台北市にあり、そこにあると思い、問い合わせましたが「そんな石仏は収蔵されていない」という返事。おかしいと思い、色々調べたことろ、「国立台湾歴史博物館」という博物館が台南市にあることがわかり、そこに収蔵されていることが判明しました。ただし非公開。2018年の企画展で公開されましたが、それ以降一般公開されていません。
  • 88番は所在不明だったものの、2019年に発見され、2023年4月に元にあった北投普済寺(旧鉄真院)に戻ってきました(農傳媒2023/5/5)。結果、重要な最初の1番と最後の88番は昔と同じ場所に戻りました。
  • 31番は正願禅寺に文殊菩薩とだけ刻まれた石仏があり、これを31番とする説もありましたが、アメリカのミシガン州にある個人宅で収蔵していることが確認できました。しかしなぜ文殊菩薩の石仏が別途あるのかは定かではありません。

台北新四国八十八ヶ所霊場の当時の地図

日本統治時代の地図を作りました。もちろん正確な場所は不明なものが多いため、おおよその位置だと思ってください。参考程度だと思ってくれればOKです。

途中から移転している石仏があるため、それらは注釈を入れています。

なおマップは公開していますので、共有などはご自由にどうぞ。

現在、実際に石仏の場所が確認できる場所は下記にまとめました。

現在の状況の詳細、そして現在の石仏の位置を記したマップも別途作成しました。実際に残された石仏を訪ねてみたい人は読んでみてください。

→ 台北新四国八十八ヶ所霊場石仏を見に行くための巡拝ガイドブック

台北新四国八十八ヶ所霊場1番札所台北天后宮へのアクセス

台北市各地に残された石仏ですが、台北天后宮が最もわかりやすく、また観光客もアクセスしやすい西門付近にあります。

台北MRT板南線西門駅から徒歩2分。西門紅楼のすぐ近くです。

台北天后宮と台北新四国八十八ヶ所霊場の動画

台湾の廟という場所は日本のお寺とは違い、結構ユニークです。理由は分かりませんが、台北天后宮には象やライオンのオブジェもあったりします。

ブログの写真だけでは雰囲気は伝えきれないので、ぜひご覧ください。

「台北新四国八十八ヶ所霊場」台北天后宮の石仏と弘法大師像

台北天后宮の石仏群

台北天后宮の石仏群

1番札所であった新高野山弘法寺は、日本統治時代終了後には台北天后宮となりましたが、場所は変わっていません。

台北天后宮(艋舺媽祖宮)の前は何度も歩いたことがありますが、実は入るのは初めて。写し四国のことを今まで知らなかったので、仕方ない。知らずに入っていたら仰天していたでしょう。

天后宮とは媽祖を主祭神として祀った道教の廟で、台湾では最も信仰されている神様です。台湾各地に500ヶ所あると言われています。総本山は雲林県にある北港朝天宮。

台北天后宮は元々は艋舺にあったものの、弘法寺の跡地に移転してきたそうで、今でも西門〜艋舺(現在の龍山寺付近)の住民からの信仰が厚いようです。

道教や媽祖、廟についてもう少し知りたい人は下記をご覧ください。

→ 台湾の廟とは?道教、仏教、儒教そして民間信仰について解説します

台北天后宮の1番石仏と2番石仏

台北天后宮はビルに挟まれた狭き入口となっていますが、中は広く開けた場所に本堂があります。

入口を抜けて広いところに出たら右後ろに石仏群があります。左後ろには大きな弘法大師像があります。

台北天后宮にある1番霊山寺の石仏

台北天后宮にある1番霊山寺の石仏

1番霊山寺の釈迦如来、2番極楽寺の阿弥陀如来の石仏は屋外に雑然と並ぶ石仏群の中に埋没しています。これらの石仏群は日本統治時代のものをまとめたようです。

1番の石仏は霊場創立時の弘法寺の時代から台北天后宮となった現在までここにあります。

2番の石仏は天台宗台北布教所にあったとされています。天台宗台北布教所は大正町にもありましたが、位置的に新富町にあった布教所であると考えられています。

新富町は現在もその名称が施設に残されています。新富町文化市場、新富市場付近がかつて新富町と呼ばれた地域です。

1934年にはこの新富町の布教所が閉鎖となってしまったため、弘法寺に移設されました。その後はずっとここにあります。

台北天后宮の2番極楽寺の石仏

台北天后宮の2番極楽寺の石仏

貴重な歴史的資料であり、史跡であり、今まで残してくれた台湾の関係者に最大の感謝をします。

しかし台湾に残る日本統治時代の貴重な史跡なので、可能ならば案内板みたいなものを設置してもらえると更に良いと思います。

台北に観光に来る日本人は非常に多いので、こちらに立ち寄った時に、中には嬉しい気持ちになる人もいるでしょうし、使い方や宣伝の仕方によっては観光資源にもなると思いますが、どうでしょう。

台北天后宮の弘法大師像

台北天后宮の弘法大師像

台北天后宮の弘法大師像

弘法大師像は屋内と屋外に計3体あります。屋内の木像は弘法寺創建時からのものがそのまま台北天后宮で祀られています。

ちなみに台湾の道教の廟には仏教の神様も一緒に祀られていることがありますが、弘法大師が神様として祀られている廟はここだけだそうです。

毎年11月には日本の金剛峯寺などから僧侶が来て法会を行うそうで、その時はこの弘法大師像は正殿の正面に移動されるそうです。

台北天后宮の弘法大師像

台北天后宮の弘法大師像

屋外の1体は日本の四国霊場の札所や真言宗のお寺で見る弘法大師像と同じです。1910年に造られた大師像です。

私はこれを見た時、四国八十八ヶ所を歩いた記憶が頭の中によみがえりました。台湾で弘法大師像を見ることになるとは。

そして般若心経を唱え、御宝号(南無大師遍照金剛を3回)を唱えました。弘法大師様も喜んでくれていると思います。

台北天后宮の弘法大師石仏

台北天后宮の弘法大師石仏

もう1体は石仏群の後方列にあります。この1体は台北新四国八十八ヶ所霊場のために造られた石仏とは形も色も違うことから、弘法寺に元々あったものではないかと思われます。

今後の回でご報告しますが、実は台北新四国八十八ヶ所霊場の札所石仏と同じデザインの弘法大師石仏が他所にいくつか現存しています。それらとは明らかに違うのです。

この弘法大師像は錫杖を手に持っているのも特徴的で、子供を抱えているようにも見えます。

1931年当時の弘法寺

1931年当時の弘法寺(出典:国立台湾大学)

参考までにかつての弘法寺の写真です。普通の日本のお寺の雰囲気です。1931年ですから、この時境内には既に台北四国八十八ヶ所の石仏があったことになりますが、当時の石仏の写真は探してもなかなか見つかりません。

台北新四国八十八ヶ所霊場その1まとめ

台北天后宮

台北天后宮

台北新四国八十八ヶ所シリーズの記事は少なくても来月までに4回投稿予定で、今回が第1回です。

この記事は日本では他に書ける人がいないでしょう。四国八十八ヶ所を徒歩巡礼し、台湾が大好きで、両方の知識があり、しかも四国遍路と台湾の両方のブログで情報発信をしている人は世界で一人だけでしょう。私にしか書けないと思います。

そしてたまたま台北に行く直前に台北新四国八十八ヶ所のことを知ったのは、偶然にしても出来過ぎな気がします。

これはきっと弘法大師様が私に課した使命、そんな気さえしてしまいます。

私が望む最も最善の結果は、台北新四国八十八ヶ所霊場の再興です。できるだけ最初にあった場所に石仏を戻し、遺失した石仏だけを新たに設置して、昔と似たように歩けるようになれば最高です。

現実的には難しいと思いますし、ほぼ不可能でしょう。しかし台湾にも写し霊場が存在していた、そしてその痕跡がまだ現存している。そんな情報をもっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。

そして一番行きやすい場所にある旧1番札所弘法寺であった台北天后宮にぜひ寄ってみてください。

台北新四国八十八ヶ所霊場の電子書籍ができました

このブログでは言及していない内容も多く加筆しています。書き下ろし。写真も増量。

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  • この記事を書いた人

NOBU

東京出身、沖縄在住、50代男。個人事業主。
日本統治時代に曽祖父、祖父、父が台湾に住んでいました。台湾は父の故郷です。 このブログでは台湾旅行で得た情報や楽しく快適に旅行できるノウハウなど台湾情報を発信中。
台湾華語検定 A1級 / 台湾検定 2級 / 台北新四国八十八ヶ所霊場研究家 / 台湾雑貨オンラインストア運営
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